はなたのオールドロマンティクス

映画みて、感想をブログに書いてます。NetflixやHuluで観ることもあり、その場合はカテゴリに表示しています!

シャッターアイランド

シャッターアイランド

2010年・アメリカ
監督 マーティン・スコセッシ
出演 レオナルド・ディカプリオ,マーク・ラファロ,
ベン・キングスレー,ミシェル・ウィリアムズ

 

 

あらすじ

閉鎖された島にある南北戦争時代の砦を使用した精神病棟。中に居るのは重大 な犯罪を犯し、かつ精神疾患のある患者。一人の女性患者の失踪のために調査に入った保安官(テディ)はこの島には隠された目的があるのではないかと相棒の チャックとともに捜査する。医師、看護婦だけでなく証言を求めた患者にすら欺かれているかのような不穏な空気。悪天候に毎晩の悪夢。相棒のチャックまでもがテディ を陥れているような暗示が、確かなものなのか、繰り返される悪夢のせいなのか・・・

 

====

以下、ネタバレありで感想です

 

 

 感想

設定

この映画でディカプリオが演じるテディは、かつて事故で妻を亡くした保安官。

しかし後に明らかになる通り、彼の妻は火事による自殺未遂の後 子どもを連れて湖畔に引っ越し、その湖に3人の子どもを沈めて殺している。そして彼自身が子どもを殺した妻を手にかけた。

 

妄想の中の彼は、自分の妻が精神を病んで火を放ったことを認めず、レディスという放火魔の仕業であると結論づけている。更にそのレディスは島の隔離病棟に「隠された患者」として存在していると信じこむ。

 

ディカプリオはインセプションでもメンヘラの奥さんに自殺される役を演じていて、配偶者に精神を病まれること、そして死なれる、ということがとても重たく、辛い出来事であり、物語の骨組みにもなるような設定としてしっかり機能していると感心する。

 

主人公テディは自らの罪を認めた正気状態の時に「最初の自殺未遂の時にドロレスが精神を病んでいることを認めなかったために3人の子どもを彼女の殺させてしまったことから、3人の子どもも自分自身が殺したも同じだ」と発言しており、

罪の意識の重さに耐え切れずに自らも精神を病んでいる状態であると考えられる。

 

***

 暴力と義憤

更に、ロボトミー手術という、脳外科手術をすることによって精神を破壊して生きるソンビのようにされることへの恐怖が語られる

主人公テディは第二次世界大戦終戦時に連合軍としてダッハウ強制収容所の開放に立会い、収容所に居たドイツ兵を虐殺した…ことから非人道的な虐殺行為、あるいは人権を剥奪する企てに関して異常とも言える拒否感があり、妄想の中でも義憤に駆られてその悪事を暴こうと奔走する。

 

マーラーとドイツ人の連想

特に印象的なのはマーラーのレコードをかけている部屋に居る精神科医に「英語は上手だけどお前はドイツ人だ」と指摘するシーン。

ドイツ人だから何なんだ、といったところだが

妄想の中の主人公はきっとユダヤ人であるマーラーの音楽からも、残虐な行為(ロボトミー手術)を行うことを結びつけて考えて、既に怒りは頂点に達すると言う感じだ。

凶暴性の高い精神障害者(主人公)が外科処置によって制御されるということは人権を剥奪され、暴力に晒される恐怖である。

その暴力から彼を遠ざけるためには罪を認めた正気の状態に持っていくべきだと精神科医達らが画策したのだが、どちらともつかない状態で彼は言う

 

「モンスターとして生きることと、善人として死ぬこと どちらが嫌だ?」

 

まあ水をさすようだが、他人に危害を加えない形で罪と向き合わずに妄想の中で生かしてあげられればいいのかも知れないが(そういう患者も映画の中の病棟にはたくさんいるだろう)

彼の場合は自分の罪を認めない妄想の中に留まる限り、今度は権威的な医師にたてつく危険な患者になってしまうという話なのだろう。

 

 

作中で使用されるマーラーの音楽はとても美しい。

 


マーラー:ピアノ四重奏『断章』

 

 最後に

この映画、全体を通して火と水の演出が多様されていてとても印象的である。

閉ざされた島ではその脱出を拒むかのように大雨が降っていて海がしけている。

主人公は海を見ると湖に沈んだ我が子を思い出して気分が悪くなり、マッチを擦って火をおこしてその記憶を遠ざけようともがいている。

しかし、そもそもは精神を病んだ妻が自殺未遂で火事を起こした時に、水辺に逃げたことでその病気に向き合わなかったという比喩とか結びついて、土砂降りの中で燃える火の表現が重々しい。